連載第17回 今月の一冊
山と旅と本
記 岩田竜一
岩峰会に入会する以前は、たびたび海外の山に登ったもんです。しかしながら、友人・知人とは長期の休暇の調整が難しいため、いつも独りでした。長期の一人旅ですから、退屈しのぎになるものが必要です。いつも目的地の国や山に関連がある本をザックにしのばせることにしていました。やっぱりそれらの本の舞台になっている土地で読むと、日本で読むだけでは得られない感動や発見があるものです。
【思い出の本】 「セブンイヤーズ・イン・チベット」ハインリヒ・ハラー著(角川文庫)
「青春を山に賭けて」植村直己著(文春文庫)
【思い出の国と山】ネパール:アイランドピーク(6100mで敗退)1999年12月‐2000年1月
はじめての海外登山、しかも新たなミレニアムの幕開けをヒマラヤのピークで迎えるためにこの旅を企画しました。このとき持って行ったのが、映画にもなった「セブン〜」でした。映画もスケールが大きくて良かったですが、原作はもっと素晴らしい!
著者はアイガー北壁初登攀者でもあります。第二次大戦時にナンガパルバート敗退後、英国軍に捕らえられたハラーは、脱出を図り命からがら冬のヒマラヤを横断、チベットへ辿りつきます。その後中国によるチベット侵略まで当地で過ごしました。
あんまりネパールには関係ないかもしれませんが、ネパールの山岳民族はチッベト系なんで、チベットの文化や自然を知るには良いかなと。。。壮絶な脱出行もワクワクさせられますが、当時鎖国をとり、まったく知られていなかったチベットの記録は貴重です。
「青春を〜」は、16歳のときに出会ってから今まで何回読んだことか!すでに中島さんから本書の紹介がありましたが、僕にとっても大好きな本のひとつです。植村直己の山が好きでしょうがない気持ちが行間からあふれ出るようです。いろいろな困難を超えて、世界中の山々を登る姿に、自分もがんばろうという気持ちにさせられます。
ネパール行きの航空券を握り締めた僕の気持ちは、植村直己がヨーロッパアルプスを目指して船に乗りこんだときの気持ちときっと同じだったと思います。僕が言うのもおこがましいですが。
【思い出の本】 「アタカマ高地探検記」 向 一陽著 (中公新書)
【思い出の国と山】ボリビア:ワイナポトシ(6,088m登頂) 2000年8月
ヒマラヤの次はアンデスへ、なんて安易な発想ではなく、この本に出会って南米を目指しました。面白いからと上司から頂いた本です。
内容は1970年8月から翌年3月にわたり、登山と学術調査の混成チームがアンデスの高地を縦断した探検記録です。アンデスのデカさがよーく分かります。隊員には各種多方面の専門家(地質、鉱物、植物など)が加わっており、話題が多岐にわたり興味深いです。読んでいるうちに自分も探検に加わりたくなります。それくらいアンデスは魅力的です。
地平線のかなたにまで続く広大な赤茶けたアルティプラーノの大地、その果てに見える白い峰、宇宙まで透けて見えるくらい蒼い空、そして驚くべき透明度の巨大な湖。僕も実際見たけれど、すごい!デカい!美しい!
【思い出の本】 「あやしい探検隊 アフリカ乱入」椎名誠著
「キリマンジャロの雪」アーネスト・ヘミングウェイ著
【思い出の国と山】タンザニア:キリマンジャロ(5,895m登頂) 2001年8月‐9月
「あやしい〜」は旅の途中知り合った旅行者からもらいました。椎名誠を隊長とするあやしい探検隊のアフリカ旅行、キリマンジャロ登山の手記です。大人になっても遊び心は忘れたくないもんです。ただし、彼らはスポンサー付きの大名旅行なんで、僕とは路線が異なりますが。
「キリマンジャロ〜」はあまりにも有名な作品ですが、読んだのはこのときが初めて。山とはまったく関係がありません。本作品の冒頭には、キリマンジャロ頂上に横たわる豹のミイラについて何かを暗示させるようにかかれています。登頂時に一応探したけどありませんでした。(当たり前か)
あと、アフリカ行きの前に読んだ本で印象に残るのは、上温湯隆(かみおんゆ たかし)の「サハラに賭けた青春」です。1970年、当時17歳の上温湯少年が、中東からアフリカ1周50カ国を単身ヒッチハイクで旅した際に書き記した手記です。植村直己の「青春の〜」に相通ずるものがある気がします。ちなみに20歳になった上温湯青年は、当時誰も成し遂げたことのないサハラ横断を、なんと独りで実行しようとしますが、途中残念ながら力尽き、帰らぬ人となってしまいました。こういう熱い心のひとの本を読むと、自分にもパワーが涌いてくるような気がします。